ハイパフォーマンスコンピューティングに関連するソフトウェア/ハードウェアの研究を行っています。
1、専用計算機の開発
特定の目的だけのための専用の計算機を開発すると、通常のCPUに比べて飛躍的に性能を高めることが可能です。これまで、分子動力学シミュレーション専用計算機MDGRAPEを開発してきました。分子動力学シミュレーションは、分子の動きをフェムト秒という非常に短い時間刻みで追っていくシミュレーション手法です。実験では再現できないような条件での物性の研究や、分子レベルの未解明のメカニズムの解明などに使われていますが、計算量がとても多いことが弱点です。専用計算機を用いて計算を加速することでこの弱点を克服することが出来ます。理化学研究所において数千プロセッサで構成される大規模なシステムの開発を担当し、世界最高性能を達成したこともあります。
2、準汎用計算機(GPU, PLAYSTATION 3)を用いた高性能計算
一般のCPUとは違って高性能であるが少し使いづらい計算機を、準汎用計算機と呼んでいます。例えば、グラフィックカード(GPU)やPLAYSTATION 3があります。これらは、もともと主にゲーム用に開発されたハードウェアですが、最新のCPUを凌ぐ性能を持っています。最大の特徴は非常に低価格なことです。更に、最近になってこれらのハードウェアを普通の計算機として使える環境が整ってきました。linux上でC言語を用いてプログラミング出来るようになったのです。この準汎用計算機を用いて分子動力学シミュレーションや渦法を高速化しています。渦法は乱流のシミュレーションに使われている手法です。条件によっては一般のCPUの何十倍も高速化されました。
3、専用/準汎用計算機向けの簡便なプラットフォームの開発
専用計算機や準汎用計算機を使いこなすにはそれなりの労力が必要です。使用するPCのハードウェアやOS、ドライバプログラムのインストールなど、普通にパソコンを使用するのに比べるとトラブルが発生する可能性が随所にあります。これらの問題を解決するために、特に最近進歩の顕著なGPU向けにKNOPPIX for CUDAと呼ばれるCDを開発しています。これはKNOPPIXというlinuxをカスタマイズしてGPU向けの開発環境やデモプログラムをセットにしたものです。最大の特徴はOSをインストールしなくてもこのCDからブートするだけでGPU向けの開発環境が出来上がることです。デモプログラムを実行・修正してGPUプログラミングを手軽に始めることが出来ます。