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緒方 秀教 教授

OGATA, Hidenori

計算科学講座

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私を含め旅が好きだという人は多い。メディアやネットが発達して、自宅にいながら世界の風物が楽しめる今日であっても、実際に足を運び、現地の風景、味、雰囲気などを楽しみたいと思う。それは、人間は「リアルな感覚」を欲するからであろう。

リアルな感覚。それは学問の世界でも重要だと考える。大学の理科で実験を重視するのは、実際の物体・物質の観察によりリアルな感覚を覚えることにより、本で学んだ知識の理解を高めるためである。

数学の場合、リアルな感覚を得る方法のひとつは演習問題を解いてみることであるが、「数値計算」も重要な方法の一つである。高校時代に三角関数・対数関数を習うとき、最初はなかなか馴染めず苦労する。私もその一人だったが、理数系に無縁だった父がどういうわけか関数電卓を買ってくれて、三角関数・対数関数のいろんな計算を関数電卓に数値計算させるうちに、自然にこの新しい関数に馴染んでいったのである。このように数値計算は、数学に対してリアルな感覚によりアプローチする方法なのである。

大学の卒論や研究などでは、自然現象・社会現象などに対し数理モデルを当てはめ、そこで現れる方程式などを解く、といった研究がある。そういう方程式などは紙と鉛筆で解けるものは稀だから、コンピュータでとにかく近似的に解を求めてみて、それをグラフや3次元画像などに描いてみる。そして、それを眺めて、自分が対峙していた現象はこういうものだったのか、とリアルな感覚を味わうのである(もちろん、数値計算は、満足感を得るだけが目的でなく、計算で得た結果が意味を持つから重要であることはいうまでもない)。

私が専攻する「数値解析」とは、上で述べたようなコンピュータで解を近似的に求めてみるための道具を研究・開発して研究現場に提供するのが大きな目的である。そして、この世の中で起きていることに対し、数学という目を通してリアルな感覚を得るための手助けをしているとも言える。最近はコンピュータが発達・普及して、パソコンのレベルでも結構いろんな計算ができるようになった。ありがたいことである。

私の現在の研究分野は以下のものである。

1.偏微分方程式の数値解法、とくに、「代用電荷法」とその関連解法に関する研究。
代用電荷法は元来電気力学における数値解法であり、静電ポテンシャルを点電荷ポテンシャルの重ね合わせで近似するという極めて素朴な方法であるが、使いようによってかなり高精度で解が得られるのである。同方法は電気力学に限らず、流体力学、弾性体問題、波動現象等さまざまな問題に応用されている。

2.関数近似および数値積分の理論的・実験的研究。

<学生の皆さんへ>

数学を学んだら、それをコンピュータ計算で確かめてみよう。コンピュータでプログラムを書いてみて、計算してみること。最初は、1+2+...+1000がいくつになるかな?というレベルから始めても構わない。
1年生の微積分で、関数のテイラー級数展開を学ぶだろう。これはコンピュータ数値計算の格好の題材である。学んだらさっそく、テイラー級数の計算をやって、グラフを描いてみよう。級数の項数を多く取るにしたがい、もとの関数にじわじわと近づいていく様子が分かると思う。
こうして、数値計算により数学に対するリアルな感覚を体験してみること。