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山口 耕平 教授

YAMAGUCHI, Kohhei

計算科学講座

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1 はじめに

 私の所属している計算科学講座には, コンピュータを利用した応用数学(数値解析など)を研究室が大多数ですが, 私のところを含めて2つの純粋数学を研究している研究室もあります。私は教育面では主に学部・大学院の数学基礎教育を担当し, 研究面では純粋数学(トポロジー)を専門としています。私の研究が直接的に生活の中でどのように役立っているかを説明することは困難ですが, 学科の基礎の基礎(理論的側面)を支えていると自負しています。

2 トポロジーの研究

 次におおまかな数学の世界と私の研究内容について概説します。現代数学の世界はおおまかに, 解析学・代数学・幾何学に分類されます。また,幾何学の世界もまた, 微分幾何学・位相幾何学(トポロジー)・代数幾何学の3つの分野に分かれています。私の研究室ではその中の幾何学の分野の1つの位相幾何学(トポロジー)の研究を主に行っています。

 位相幾何学(トポロジー)の研究対象は高次元図形(曲面の一般化の多様体など)の位相的性質やその分類が主な研究課題です。有名なポアンカレ予想の問題(最近解決されもはや予想ではない)なども位相幾何学の研究課題の1つです。残念ながら一般の方々に予備知識なしに説明するのは難しいです。(たとえば, 有名なポアンカレ予想ですら一般の方にはトポロジーの基礎常識なしに理解できないと思います)

 そこで, 以下にもっと雑な説明をします。もし高校生2年生以上の方であれば高校の数学の授業で, xy 座標平面上の曲線y = f(x) のグラフを書いたことがあるでしょう。そのとき, どうやってグラフを書いたでしょうか?まず, 関数y = f(x) を微分して関数y' = f'(x) を計算する。次にf'(x) = 0 となる有限個の点P1(x1, f(x1)), ・ ・ ・ ,Pm(xm, f(xm)) を求める(このようなm個の点を特異点と言います)。各点Pk の前後でf'(x) の符号(正負)が変化するかを調べそれに応じて各点Pk の近くの関数f(x) の増加減少を調べそれに応じてグラフの概形を描いたことと思います。これが平面上ではなく3次元空間やもっと4次元以上の高次元の空間で, その空間の形状等がどうなっているかを調べる学問を「位相幾何学(トポロジー)」と言います。

 平面上の図形では特異点の情報だけで概形がわかりますが, 高次元図形 M を判別するための情報を表現するには特異点のような離散的情報だけでは不十分で, それらの情報を表現するために代数的対象(群・環・体)を勉強しそれを利用して, さまざまな位相不変量(ホモロジー群H*(M, Z),ホモトピー群πk(M) など)研究します。このような代数的対象物は, 最近応用上も重要で暗号理論などにも活発に応用されてます。その意味で,本研究室での研究ではこのような代数学の基礎的勉強も必要になります。

  このように, さまざまな数学(解析学, 代数学)を勉強しながら高次元図形の不変量達を計算して高次元図形を調べることが私の研究室の主要課題となっています。

3 学生の皆さんへ

 私自身はもともと高校時代は, 数学・物理が好きで, 理系を志望していましたがどの分野に進学するべきかわからず大学入学時は工学部に入学しました。しかし, 工学部は入学後は実験ばかりで応用ばかりに目を向け,理論をもう少しゆっくり基礎の部分から勉強したいと思い理学部へ2年生のときに移りました。大学でなにをやりたいかを明確に決めてしまった諸君もいると思いますがまだよくわからない諸君もいると思います。しかし, 本研究室のように, コンピュータに関連する工学的研究だけではなく上記のような理論的側面の研究も行っているところもあります。

 最後に, 本研究室では基礎からさまざまな数学を勉強しながら進んで行きますから, 卒業研究は大学院まで進学することを前提として望んでいただきたいと思います。ゆっくり, 数学の美しさを楽しみませんか!